第一章 犬猿の仲? 「さて、常盤工業のライバル社の太陰工業で開発中の製品の強奪が任務だ。 目標は明日、ウラグ湾の同社海上基地でテストを行うらしい。そこで強奪してくれ」 店主は俺達にいつもどうりに任務の情報を伝えてくれる。 「分かった。報酬は?」 竜条が腕を組みながら頷く。何処と無くキャラ作りを意識しているようだ。 「30万と、常盤工業製の新型兵器だ」 ちなみに、報酬の平均額はだいたい50万ぐらいだ。 「新型兵器?」 思わずオウム返しに俺は聞いてしまう。 「ああ、企業側としては調査も出来るから一石二鳥なんだろうな」 「気に入ったわ、受けましょう」 恵理奈が勝手に契約書にサインをする。 一度サインしたら、そのパーティーは全員サインしなければならないという暗黙のルールがある。 「しょうがないな」 残された男軍団も契約書にサインをし、皆、それぞれの家路についた。 明日・・・・ 家の前にやけにうるさい車が停まった。 (うるせぇ車だ・・・誰だ?) 俺がカーテンを開けると運転席から竜条が手を振っていた。 「エンジンを切ってくれ。近所迷惑だ」 そう言うと直ぐにエンジンが切れた。 「少し待ってくれ。まだ身支度してない」 俺は一言言ってから戦闘服に着替える。 「待たせたな」 俺は助手席に乗り、出発する。 「恵理奈は・・・居る訳ないか・・・」 やれやれといった感じで俺が首を振る。 「そう言うローレスも俺が来るまで起きてなかったじゃないか」 「いやっ・・・あれは・・・昨日寝たのが遅かったからで・・・」 あきらかに動揺してしまう俺 「まっいつもどうりだから気にしねぇよ」 そうこうしている内に庄松の家の前に着いた。 「んじゃ、俺が行ってくる」 そういって竜条が運転席から降りてドアの前に歩いて行く。 俺が竜条を助手席から心配そうに見ていると、「大丈夫だ」といった感じでこっちを見返す。 (本当に大丈夫か?) 竜条が家の中に入っていって数分後・・・ 「グアアアアアァァァァ・・・・」 竜条の悲鳴が家の中から響く。 「だから俺は行くなと言ったんだ・・・」 何が起こったのか分からないので竜条視点に切り替えて見ましょう。 (さて、入るかな) 俺はドアを開けて、庄松の部屋に向かう。 ドアの前には「死にたくなければ開けるな!」と書いてある看板がぶら下がっている。 とりあえずドアをノックして、庄松を起こそうとするが返事すらない。 「しょうがねぇな」 俺がドアを開け、足をふみいれた瞬間に、目の前にダガーナイフが突き刺さる。 「えっ・・・」 何で?と次の言葉を紡ぎ出す前に一瞬で懐に入られ、何が起きたのか分からないまま、投げられ、関節技を極められる。 悲鳴の原因はそれだ。 家から出てきた竜条はひどくやつれて見えた。 「まったく、レディーの寝室に無断で入るから天罰が下ったのよ」 さも、当然のように言う恵理奈 「レディーなんてもう死語だよ・・・歳いくつ・・・」 言い返そうとした竜条は恵理奈の裏拳によってシートに沈む。 「真っ白だぜ・・・」 竜条がシートに沈んだ事で、車を制御する人間は居なくなり、暴走し始める。 「馬鹿やろう!!運転中のドライバー気絶させてどうすんだよ!!!」 「えっ?何の事?恵理奈ちゃんわかんなーい」 誤魔化しの言葉と同時に繰り出されたカウンターパンチをギリギリで俺は見切る。 「見切った!!お前の技はもう効かん!!」 恵理奈はハンドルを切り込み、強烈な横Gを作る。 ドンッ!! 油断していた俺は横Gに耐えられる事が出来ずに、バランスを崩す。 「もらった!!!」 恵理奈の肘鉄が脇腹に命中し、俺の意識は闇に堕ちていった・・・ 車が急停車し、そのおかげ?か、俺は頭を、どこかにぶつけ、目を覚ました。 「ほら着いたわよ」 もう車から降りた恵理奈が俺に声を掛ける。 「ん?ああ、すまない」 たとえ気絶したのが奴のせいだとしても、反射的に礼を言ってしまうのが俺だ。 車は、小さな小船が停泊している小さな港に到着していた。 「あれに乗るのか?」 俺は竜条の背中を突きながら訊く。 「店主の計らいだ、本当は自分で調達しなきゃいけないんだが、店主に予約して貰った。さっ乗るぞ」 (本当に小船だな、でもあれぐらいの大きさが潜入には調度いいのか?) うーむ・・・と頭を捻っていると、船員のような風体の男が竜条と話しているのが目に入った。 「二人とも、紹介しよう。店主の古くからの友人で、今回俺達を運んでくれる責任者だ」 「どうも、さて、早速乗るぞ」 どうやら船長のようだ。 船長は皆を誘導して、船に乗せる。 「お譲ちゃん。船が揺れるから気をつけるんだよ」 船長は60前後の老人に見える。 「あら、ありがとう船長」 「掴まりな」といった感じで出された手を掴んで恵理奈は船に乗り込む。 よっぽどお譲ちゃんと呼ばれたのが嬉しいのか、愛想がいい。 (まっ俺達のパーティーじゃそんな事言われないからな) 船、海上を見た目からは到底考えられないようなスピードで快適に走る。 海上基地にだんだんと近づくいて行き、俺達は海上基地を支えている脚部のメンテナンス用通路に潜入した。 ここから先が本番だ。 つづく!!